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二児のワーママ、人生を合理的に進める記録

【書評】★5 「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか

助けてが言えないーー援助希求力(ヘルプシーキング)に乏しいと言ってしまえば「個人の責任(能力がない)」になってしまうけれど、様々な理由から助けてなど一言も言い出せない(あるいは言うという選択肢がない)人たちを、「助けてと言われないから放っておいていい」のだろうか。

本書は主に精神科の問題を抱えた人が助けてと言えず立ち止まっているところに医療者がどうかかわっていくかのヒントがたくさん詰まっている。正直元職場にいたケースワーカー等援助職に全力でお勧めしたい本である。

「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか

「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか

 

 さて、援助希求力というのがテーマの一つになっているが、いじめ、セクハラ、虐待、これらを経験しながらそれを人につぶさに話さないといけいないというセカンドレイプを考えると、もはや個人がSOSを出していく時代でもないのかなと本書を読んでいた感想である。

個人がSOSを出すには相当な精神的な負担がある。子供のころの自己肯定感の低さのまま大人になった人に良くありがちな「自分なんか助けてもらうに値しない」という気持ちであったり、そもそも知的障害があり問題を問題と認知していなかったりなど、SOSを出すにあたって壁が存在するようである。

本書は雑誌の一コーナーをまとめたオムニバス形式で「こういう援助の仕方があるのか」と学べることもさながら、「うちの分野ではこういう応用もききそうだ」という新たな発見、「この人がこんなことをやっているのか、面白そうだ、真似したい」という着想も得られる。

そもそもなぜこの本を手に取ったかというと、保育園で看護師をしているが小学校への連携として、あらかじめ心のこと・ヘルプはここに出せばいいということを教えたらよいのだろうか、それとももっと別の方法があるのだろうかと思って参考文献として取り上げたのだ。読み進めているうちに、あとがきにある座談会はぜひとも親世代に広めたい言葉があった。

「自立とは、依存できる場所を増やすということ」

私はこの一文を読んだときに、わかる、ほんとそれ、と思ってしまった。

昨今サードスペースが盛り上がっている。要は家庭、学校(大人で言えば職場)以外の場所やつながりが必要であるということだ。我が家にとってのサードスペースは教会なのだが、一般の人はどうだろうか?喫茶店のオーナーとしゃべったり、趣味の人たちと繋がったり…。

その一方、特に家を持たない人で、ホームレス支援となると「つながり」に辟易してふらっと猫のようにいなくなってしまうこともあるそうだ。

 

病院、訪問看護、住宅提供、それにたまに行政。それらがサードスペースになることにより、自然とSOSが出てくる可能性があると本書の一部分に取り上げられていた。そう、SOSを発するのを待っていたら遅いのである。

本書を読んで、自分の行おうとしていたメンタルヘルスの健康教育をもう一度練り直そうと思い立った。まだ、勉強不足だと感じる。本書を読み、筆者らの活動をよりよく調べていくことで、保育園看護師として伝えられることを伝えよう。そして、年度末に向けての大人も含めた教育を進めていこうと帯を締めなおす思いであった。